こんにちは、愛弓です。
今回お話しするのは、私がまだセラピストになったばかりの頃のお話です。
お客様にマッサージしてたら、突然、何年も前にあった事故のことを思い出し、事故の体験を話してくれました。
そして、彼女は事故のことを話しながら、泣いていました。
ずっと思い出すことのなかった事故のことをなぜ思い出したのかはわかりません。
彼女自身も驚いているようでした。
でも、彼女は『周囲に心配かけないように…』と自分の辛さも、吐きだしたかった弱音も感情も…我慢していたのかもしれないなって。なんとなく思いました。
施術中、事故にあったことを思い出して涙したお客様
私がまだ、セラピストとしてお客様に施術し始めたばかりの頃、久々にご来店された30~40代くらいの女性の施術に入りました。
彼女は優しく、相手が気を使わないように言葉を選んで話してくれるような…とても優しい女性でした。
当時の私はまだ、自分の施術には自信がなくて…昔から来てるお客様というだけで緊張していました。
彼女は久しぶりのご来店だったので、私の経験が浅いことは知りません。
それでも彼女の話し方は優しくて、私を気遣ってくれるような感じもあって…楽しくお話ししながら施術していました。
途中で彼女が黙った時、『あぁ、本当は話してないで、静かに受けたかったのかな~』と思って、声をかけずに施術を続けました。
すると彼女は、突然、「もう10年位前なんだけど…事故に巻き込まれたことがあってね…」と、言いにくいことを勇気をもって『話そう』と決意したかのように…声を絞り出すように、話し始めました。
初めは日常会話だと思っていた私も、『あ、これは聞き逃しちゃいけない気がする…』と耳を澄ませました。
すると彼女はハッとして、「こんな話、ここでするような話じゃないんだけどね…」「もしも聞きたくなかったり、迷惑だったら言ってね」と、お店や私を気遣ってくれました。
そして、彼女は事故にあった時のことを、少しずつ話し始めました。
少しづつ、絞り出すかのように自己の話をする彼女の声は、それだけでも彼女の体験したことを物語っているような気がして…
きっと、私には想像のできないくらい、辛くて、大変なことだったのだと思いました。
安易な言葉を返すことはできず、ただ、彼女の話を聞いていたような気がします。
話し始めてすぐ、彼女は泣きだしました。
それはまるで、『周囲に心配をかけないように…』と、痛くて辛かったことも、吐きだしたかった弱音も感情も…当時我慢して抑え込んでいたものを外に出すための涙のようにも感じました。
私はただ、彼女の泣き声の合間に聞こえる、絞り出すような小さな話し声を聞きながら、マッサージを続けました。
彼女の声が聞こえるように、肩回りを中心に緩めながら…彼女が泣いてることが周囲に気づけれないように、死角になるように調整しながら、施術を続けました。
そのあと、どんな施術をしたのかはよく覚えていません。
ただ、うつ伏せが終わって顔をあげた時、事故のことを思い出して泣いていたとは思えないほど、スッキリした明るい表情をしていたのは、なんとなく覚えています。
その後も彼女は、ご来店するたび、私を指名してくれるようになりました。
それ以降、彼女が施術中に泣いたことはありません。
あの時、あの瞬間に、抑え込んでいた感情を吐き出すことができたのなら、よかったなと思います。
『心配・迷惑をかけないように…』と抑え込んだ感情は、体や心に残ってたのかもしれない
施術してる途中で、過去のことを思い出して涙するお客様は、たまにいます。
会話の流れで、思い出すような何かを言った可能性もあるし…
体に触れてるうちに、体の中にため込んでいた感情が、過去の記憶と一緒に流れ出てくることもあるんじゃないかな~なんて思ったりもします。
…と言っても、私には、どうしてこういうことが起こったのかを説明することはできません。
ただ、彼女が事故のことを思い出したことも、同時抑え込んでいた感情に気づいたことも、誰にも吐き出せなかった弱音を吐き出せたことも…よかったんじゃないかなと思います。
『周囲に心配をかけないように…』『迷惑をかけないように…』と気遣いをする彼女は、優しくて、素敵な女性です。
でも、周囲のことを心配してばかりいると、自分の感情や本音を抑え込んでしまうことがあります。
本当は泣きたいのに、まだ辛くて動きたくないのに、弱音をはきたいし誰かに聞いてほしいのに…無意識のうちに、何もなかったことにして、抑え込んでしまうこともあると思います。
私はそれを悪いことだとは思いません。
ただ、そうやって自分の中にある物をたくさん、たくさんため込んでいくのは、辛いだろうなって。
だから、たまには自分のそういう感情・感覚を許してあげる時間ができたらいいなって。
抑え込んでしまった感情・感覚・記憶は、体や心の中に残ってるんじゃないかなって思う時があります。
もしも、それを外に出してあげることがでいる瞬間があるなら、涙と一緒に外に流せたらいいなって。